菌と発酵 
   


<無発酵パン>
森:(略) 我が家の場合は、生活を中心にする。例えば、いいのは料理なんですね。食い物に一番弱い。大人もそう、食い物が一番です。ま、何でもいいから作っちゃうのね。

うちは子どもが幼児の時、無発酵パンを作ったんですね。無発酵パンを作った場合、こねて成形するでしょう。その時に、単なる丸じゃなくて、ドーナツをふざけて作ったの。それとあと、やってるうちに「あー、魚だ。」とか言ってね。ナイフや竹のへらを使って刻みながら…。なんかこう鱗をつけて、目玉をチョンとやると魚に見える。まあまあのを写真とってありますけど。そういうのやると、おもしろくて、どんどん子供はやる。それはもう、造形に入るのかどうか解らないけど、粘土代わりですね。

それと、無発酵パン、けっこう味がいいんですよね。よく噛むし、歯にもいいですね。堅くて。それとね、保存食的に、デパートなんかに行ったとき、それをしっかり持って行く。幼児ぐらいでも、お昼ご飯を食べて出かけても、また腹が減るから、階段とかにこしかけて、ポリポリ食べて。おやつ代わりにもなるし、昔の戦争でいうと、乾パンみたいなの、あんな感じの使い方をしていました。

<発酵と腐敗>
それ以外に、日常いろいろ料理をやりますね。そこに人類の遺産としての、知的なものをからませていきます。例えば発酵の話をします。

甘酒なんかの場合、子どもは、なんでこれで甘くなるのか不思議なのね。その時は、目に見えないバイキンさんが、ムシャムシャ食べて、そのウンチとかオシッコとか出て、それがこうやっておいしくしてくれるんだと、最初は説明するのね。不思議な感じがするよね。あと、ゴミの方は、似たようなバイキンさんだけど、バイキンさんが出すものがまずいから、あんなに臭いんだ、とね。だけど、親戚なんだ、という風な話をする。

発酵現象と腐敗現象、中身は一緒なんだと。それは、パスツールが発見したんですよね。ワインが酸っぱくなって、それを工場主が調べに行ってくれというので見つけたのが、微生物。「生物学史」という本があるんだけど。

自然に発生してくるのか、元の菌があって出てくるのか、二つの考えたかたがあって、菌があるからなるんだ、と実験的に証明したのがパスツールですね。その菌を遮断したら大丈夫、という結論を出した。

部分的に、パスツールのことをチョロチョロっと出して、地球儀なんかで、この国のこういう人が、何年前こういうことやったんだ、という風に説明します。歴史的な話にもなるし、人物を尊敬することにもなる訳です。やっぱり人間に役立つことをやってくれた訳だから、何度も言って悪くないと思う。

というんで、うちの場合は、歴史も理科もいっしょくたなんだよね。それと、高等学校の話だろうが、小学校の話だろうが関係無い、生活に必要な範囲で教えてる。

だから、発酵の話と腐敗の話もいっしょくたなんだ。で必ず、その場面が出たときに説明する。だから、発酵の話に突如結びつけるんじゃなくて、発酵現象っていうのは、堆肥作ったりなんかしてますから、うじ虫が涌いたりなんかしているのを子ども達は見てるでしょ。

ばい菌さんのうんちとか死骸とか、そんなのを今度植物が食べるというのを説明してる。だからそういう個々バラバラな、いろんな分野があって、それがだんだん結び付いてきて、発酵現象・微生物の活動の動きになる、というふうな目に見えないものに対して推定ができるようになるね。

冷蔵庫入れといてかびが生えたとか、それから湯沸器ね。湯沸器の中に、そういう菌が繁殖するそうですね。ずいぶんいるそうです。僕の知ってる人のお父さんが、湯沸器の仕事やってて、聞いたことあるけれど、随分いるそうですね。その温度が丁度いい菌が繁殖するらしい。だから危ないって言ってるんです、気を付けないと。

冷蔵庫の中も、やっぱり菌はいっぱいいますから、だからクリームチ−ズ置いといたら青かびがひゅっとはえたり。(笑い)うちの奥さんは、そういう菌、見えないものは平気ですから、もういろいろやる。(笑い)もうごちゃ混ぜに置いといて、漬物がおかしくなるとか。ゴミ袋の横になんか置いたりしているから、駄目になっちゃうんだよね。はなさなきゃ駄目じゃないのって言う、まあそんなんです。

K:ああそうなんですか?

森 :ほら、似たのがいた。(笑い)
だから、見えなきゃいないと思ってるんだ。我が家では、そういうのがもう笑い話なんです。だから子ども達も、笑いながらそうやって会話しているのを聞いてるから、批判っていうよりも、もう笑い、「あはは」ってやっちゃうからね。だから人から言われたってもう気にしない。「あはは」で終わり。例えばそういうお話です。


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